子供に話すお金の話

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第30回:所得税

突然ですが、普段私たちが何気なく使っている道路や橋などを造ったり、あるいは修理したりするお金はどこから来るのかご存知でしょうか。あるいは、生活を守ってくれるおまわりさんや消防士さんたちは、誰がお給料を支払ってくれているのでしょうか。実はこれらは全て「税金」として、国民のみなさんから広く集められています。つまり、税金があるからこそ、道路や橋を作ったりすることができ、また警察官や消防士さんが私たちの生活を守ることができるのです。

では、どうやって政府は税金を国民から集めているのでしょうか。税金にはいくつか種類があるのですが、今回はその税金の中で私たちの生活と最も関係の深い「所得税」についてお話をしたいと思います。


所得税ってなに?

さて、「所得税」っていったい何のことなのでしょうか。まずは所得税の説明をする前に「所得」とは何かを先に説明しましょう。

「所得」を辞書で引くと「得をすること、儲けること。」と書いてあります。つまり、お金を稼ぐことをいいます。例えばお父さんが働いてお給料をもらうと、それはお父さんがお金を稼いだことになるので「所得」となります。

この所得税は「所得に対する税金」ですから、「誰かがお金を稼いだら、それに対してかかる税金のこと」を指します。つまり、お父さんがお給料をもらうと、所得税を国におさめることになっているのです。

では、この「所得税」という制度はどのようにしてできたのでしょうか。

まず、世界で最初に導入されたのは1799年イギリスのナポレオン戦争のときです。当時、戦争のためにお金が必要だったため、所得に対して10%を集めたのが始まりでした。その後アメリカでは1861年に南北戦争の際に導入されました。これも、ナポレオン戦争と同様、戦争のためのお金を集めるのが目的でした。日本で最初に導入されたのは1887年です。このときも当時の中国である「清」に戦争で対抗するという目的のため、一部のお金持ちからお金を集めたのが最初です。当時は「富裕税」と呼ばれ、このときはよほどのお金持ちでない限りは税金の対象ではなく、むしろ税金を納めることがステータスだったため、別名「名誉税」とも呼ばれていました。そして、第2次世界大戦の直前にあたる1940年では、戦争の準備でさらに多くのお金が必要となったため、お金持ちからは非常に重い所得税をかけるとともに、所得の低い人たちからも税金を取るように大幅な改正が行われました。

所得税をはじめた背景には、世界でも日本でも「戦争をするためのお金」だったことがわかります。

今では戦争をしないと日本国憲法にも書いてあるとおり、所得税が戦争に使われることはなく、むしろ私たちが安心して便利に暮らせるように使われています。


所得税はたくさんもらっている人ほど税金が高い!

さて、所得税はどれくらいの割合で支払うものなのでしょうか。

ここでAさん、Bさん、Cさんの3人を比較してみましょう。それぞれ1年間に稼ぐお金は、Aさんが300万円、Bさんが1000万円、Cさんが1億円とします。

以下の表をご覧ください。

  Aさん Bさん Cさん
お給料 300万円 1000万円 1億円
所得税 20万円 176万円 3720万円
税率 6.7% 17.6% 37.2%

お給料がたくさんもらっていればもらっているほど、税金をおさめる割合も高くなっていることがおわかりでしょうか。例えば、Aさんの1年間のお給料が300万円ですので、所得税は20万円となり、税率(お給料に対する所得税の率)は20万円÷300万円≒6.7%。ところが、Bさんは1000万円ももらっているので、所得税は176万円。所得税で支払っている金額も大きいのですが、税率も17.6%になっています。さらにお給料の高いCさんはお給料を1億円ももらっているので、税金はなんと3720万円。税率も37.2%となり、お給料の1/3以上を税金としておさめていることになります。このことからもわかるように、所得税はお金をたくさん稼いでいる人ほど、多く税金を納めることになっています。このように税率が上がる仕組みを専門用語では「累進課税制度」といいます。では、なぜ多くもらっている人の税金を高くしているのでしょうか。

実は、国全体で助け合いをするためなのです。つまりお金の豊かな人からはたくさんの税金を取り、貧しい人からは少ししか税金を取らないようにしているのです。そして、集めたお金で道路などを作ってみんなで使えるようにすることで、間接的にお金持ちが貧しい人を助ける仕組みにしているのです。このように、税金を通してお金持ちから貧しい人にお金が回るようにする仕組みを、「所得の再分配」といい、所得税はお金持ちと貧しい人の差、つまり貧富の差を少なくする効果があるのです。

では貧富の差をなくすために、お金持ちにはどんどん所得税を高くしていけばよいのでしょうか。実はそんな簡単にはうまくいきません。たしかに、お金持ちの所得税をもっと増やせば、貧富の差は小さくなります。しかし、お金持ちの立場からすると「お金をたくさん稼いでも、結局税金で持っていかれてしまうのだから、もう一生懸命お金を稼ぐのをやめよう」と思うかもしれません。そうすると、税金そのものが減ってしまいます。あるいは、「日本にいると税金が高くてお金が貯まらないから、税金の安い国に住もう」ということになれば、やはり税金が減ってしまいます。そのため、あまりお金持ちに所得税をたくさんかけすぎるのも、逆効果になってしまう可能性があるのです。

ちなみに、今は所得税の最高税率は40%です。つまり、どんなにたくさんお金を稼いでも、その40%以上を所得税として支払うことはありません。例えば、10億円稼いだとしても、所得税は4億円(実際はもう少し低い金額)になります。40%というと、相当大きな金額ですが、これでも以前に比べればかなり税率は下がっているのです。

ちなみに1986年までは、なんと最高税率は70%だったのです。つまり、10億円稼いだとしても、約7億円は税金として支払わなければならなかったのです。20年以上前に比べれば、ずいぶんと下がったことがわかりますね。


日本では「お金持ちランキング」は発表されなくなったの?

皆さんの中で「日本人の中で一番お金を稼いでいる人は誰だろう?」と思ったことはありませんか。

残念ながら今は誰が一番お金を稼いでいるかについては公開されていないのですが、実は、つい4年前の2005年までは「お金を稼いだ人ランキング」(正確には「税金をおさめた額の多い人ランキング」)が発表されており、新聞やニュースなどでも毎年取り上げられていました。

ところが、プライバシーの問題が大きくなり、2005年に廃止となってしまったため、毎年のランキング発表はなくなってしまいました。ではなぜプライバシーの問題が大きくなったのでしょうか。

それまで公開していた情報にはなんと名前だけでなく住所も記載されており、全国の図書館で誰でも調べることができたのです。したがって、様々な商品の売り込みや寄付のお願いなどがたくさん来てしまうため、「お金を稼いだ人ランキング」に名前が載った人からは公開しないで欲しいという要望が多くあがりました。また、それ以上に問題になったのは、お金持ちを狙った強盗や誘拐などの犯罪に巻き込まれることでした。実際に名前の発表された人が次々に狙われたことから、社会問題にもなっていました。

昔は有名なスポーツ選手や芸能人がいくらぐらい税金を支払っていたかが公開されていたため、毎年発表の時期になるとワイドショーでも話題になっていました。「最近はお金持ちランキングの話がないなぁ」と思った方も多いのではないでしょうか。実は、その背景には、4年前から「お金を稼いだ人ランキング」そのものが公開されなくなったからなのです。



執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFP®、日本キャリア開発協会認定キャリアカウンセラー、日本応用カウンセリング審議会認定心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信会社に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。

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